

2008年8月27日更新

まず、全体の市況から概括してみましょう。
物件の供給数は、予想以上の勢いで縮小しているようです。不動産経済研究所が調査した今年上半期(1-6月)の首都圏新築マンション市場動向によると、新規供給戸数は2万戸強で、昨年の同時期に比べて約24%も減少しました。都県別で見ても、すべての地域で2桁台のダウンです。
供給戸数が減少している原因は、昨年から目立ってきた価格の上昇に消費者がついていけず、売れ行きが鈍っていること。売れ行きのバロメーターといわれる月間契約率は、今年に入ってから好調の目安といわれる70%以上を割り込み、月によっては50%台まで低下することもありました。
その結果、販売中の在庫が1万戸を超え、新規の供給に慎重になっているといわれています。

同研究所の予測では、08年下期(7-12月)も大幅な供給増は見込めず、通年でも5万戸を下回る可能性が高いとのこと。これは1993年以来、15年ぶりの低水準です(図1参照)。
もともとの供給能力は6万戸以上あるといわれています。価格の上昇が頭打ちになり、ユーザーが無理なく手の届く価格帯で出てくるようになれば、供給量も回復してくるかもしれません。
もっとも、90年代以前は4万戸前後が平均的な供給量でした。5万戸弱でも、選択の幅はそれほど狭くはないといえるのではないでしょうか。では、次に具体的な物件の傾向について紹介します。
ここ数年来の新築マンションの好調な売れ行きを牽引してきたのが、大規模開発と超高層のマンションです。首都圏では04年から06年まで、総戸数200戸以上の大規模マンションの供給が3万戸を上回るほど活溌でした。それが07年から急ブレーキがかかり、全体の供給減を助長しています。
とはいえ、数年がかりのプロジェクトとして進むのが大規模マンションです。販売時期が遅れ気味になっていたプロジェクトが、今年に入ってから、ようやくスタートし始めた例も出始めました。
図2は、この秋に販売される総戸数700戸以上のビッグ・プロジェクトをピックアップしたもの。1000戸を超えるメガマンションも少なくありません。昨年からの継続物件も含まれていますが、今年から始動した物件も目立ちます。しかも『大崎ウェストシティタワーズ』『二子玉川ライズ タワー&レジデンス』のように内陸部のタワーマンション、『パークシティさいたま北』『パークシティ柏の葉キャンパス一番街』『フォレシアム』のように広大な緑の中庭を持つ中高層も含まれています。
この秋は、今年前半に比べて大規模マンションのバリエーションが増えてきたといえるのでないでしょうか。
|
大型のプロジェクトに隠れて目立たない存在ながら、このところじわじわ増えているのが「コンパクト・マンション」。専有面積30平米から50平米程度で総戸数が50戸〜100戸以下の単体マンションです。シングルやDINKSといった小家族の新たなニーズに応えるために、投資用ワンルームと3LDK以上のファミリータイプの隙間を埋める形で登場しました。
立地は都心周辺で、最寄り駅から5〜6分以内というのが共通項。プランも、単にファミリータイプの部屋数を減らして縮小したものではなく、キッチンや浴室もニーズに合わせてきちんと作り込み、部屋の中でのリラクゼーションを可能にする提案などが施されています。特にシングル女性を意識して、ひとりでも安心して暮らせるようにセキュリティが充実しているのも特徴のひとつ。
2000年前後から登場し始めて、03年に隆盛しましたが、その後はやや沈滞気味に。コンパクト・マンション専門の物件が減り、タワーマンションの低層階に含まれるケースが多かったようです。
しかし最近になって、東京建物の「Brillia id」や東急不動産の「クオリア」のように、コンパクト・マンションに特化したブランドを立ち上げていたデベロッパーに続く動きが出てきたのです。

また、投資用ワンルームを中心に手掛けていたデベロッパーが、不動産ファンドや投資家の動きが鈍ってきたことを受けて、分譲タイプのコンパクト・マンションにシフトした供給体制を取るケースも出てきました。
今後は、さらに注目される分野になってくるかもしれません。
|
最後に、特定のスポットで物件が集中している供給ラッシュエリアを紹介しましょう。
もっとも競合が激しいのは、JR総武本線の「稲毛」。新規供給マンションが8物件もあります。分譲中の物件を含めると、なんと17物件が集まっているのです。同沿線の「船橋」も、新規物件が4件、分譲中が9件、合計13物件が出ています。
また、新規と分譲中を含めて8物件に達するのは、JR常磐線・東京メトロ日比谷線・東武伊勢崎線の「北千住」、都営浅草線の「船堀」。同じく7物件は、JR京浜東北線の「川口」、JR宇都宮線・高崎線・埼京線の「大宮」、JR横須賀線の「東戸塚」です。 いずれも、都心部と郊外部との中間に位置するエリアといえます。
やや郊外に行くと、一つの駅ではありませんが、京王多摩センター・京王堀之内・南大沢を擁する多摩ニュータウン地域では、新規と分譲中を合わせて15物件が供給されています。いずれの地域も駅周辺の商業施設が充実し、歩車分離などの計画的街づくりが進み、物件周辺にも優れた景観が続いているのが特徴です。
供給量が減少傾向にあるなか、広い範囲に目を転じてみると、意外に豊富な選択肢があるかもしれません。