

2008年9月24日更新

まずは「なぜ『デザイン』というトレンドが生まれているのか?」を解き明かすために、マンション市場に詳しい東京カンテイ市場調査部・上席主任研究員の中山登志朗さんにうかがいました。
「実はデザインを重視したマンションというのは、いまに始まったことではないのです。およそ10年前の1990年代半ば、首都圏では、毎年9万戸を超える新築マンションが供給されていました。供給の絶対数が多いので、デベロッパーは販売戦略を立てる上で他社の物件と差別化を図るのに腐心していたわけです。そこで2000年くらいから使い始めた“切り札”の一枚がデザインだったのです」

湾岸のマンション開発ラッシュがデザイン重視のトレンドを育んだ
2004年前後からは都心集中現象が本格的に始まり、湾岸部にタワーマンションが続々と建設され始めました。これらのタワーマンションでもデザインが重視されているケースが多いと中山さんはいいます。
「湾岸部のタワーマンションは総戸数300戸以上など、大規模マンションであるケースがほとんどです。そうした大きなスケールなら、必然的に分譲総額が増えますから、開発段階で使える予算枠も広がる。いくつかのデベロッパーは、他の湾岸のライバルたちに何とか差をつけようと、共用施設のデザインを重視したのです」

最上階33階の共用施設「THE33」に設けられた「THE BAR」完成予想CG。温もりを感じる天然素材がふんだんに用いられる
「Brillia Mare 有明 TOWER & GARDEN」
スカイパビリオン/0120−502−550

まるでリゾートホテルのような「THE SPA」完成予想CG
では、湾岸部に建つマンションの事例をみていきましょう。
「Brillia Mare 有明 TOWER & GARDEN」は1078戸、33階建て。最上階を「THE33」という名の共用施設にして、バー、ラウンジ、ゲストルーム、ジム、スパなどが設けられます。
東京建物・遠藤崇さんは、開発コンセプトを次のように話します。
「私たちは人が滞在する建物の理想形はホテルだと考えています。そこで、THE33のデザインを、世界各国のハイアットを手がけているスーパーポテトに依頼しました。モデルルームにつくったバーを見て、マンションではなく、てっきりホテルのバーがつくられているのだと勘違いされたお客さまもいたほどです」
スーパーポテトはマンション業界ではなじみが薄いかもしれませんが、ホテルやレストランなどのインテリアデザインではたいへんに有名なインテリアデザイナーの集団。マンションでの仕事は初めてだったことも話題になったそうです。
BEACONカフェ完成予想CG。モデルルームにこのカフェが再現された空間がある
BEACONカフェライブラリー完成予想CG。自宅の一部のように書斎やサロンとして使うことができる
最寄駅からは徒歩約20分でも、東京湾の稲毛海岸が目前で公園もすぐそこ。恵まれた住環境の力をもっと引き出すために、共用施設の内装を物販店舗のインテリアデザイナーに依頼したのが「Brillia稲毛海浜公園」です。

最上階のゲストルーム1「シーサイドスイート」
ラウンジにはカフェ、ライブラリーなどが用意されている。無垢の床材が温もりを感じさせる 江戸時代から続く歴史ある住宅地、文京区・小石川。ここに建つタワーマンション「THE TOWER KOISHKAWA」は土地の伝統を活かす和のデザインを使って、より魅力的なマンションになるコンセプトを掲げています。
オリックス不動産によると、
「小石川という土地が持つ文化を、マンションのデザインに取り入れようと考えました。意匠の名前は“JAPAN DECO”。象徴的なのはマンションの館名板とエントランスホールのシャンデリアや暖炉に使われたロートアイアンです。これは鍛冶工芸作家の中澤恒夫さんがつくった鉄のアート作品。高温で熱した鉄を鍛えてつくるもので、出来上がった作品にひとつとして同じカタチはありません。重厚ですが、それでいて温もりが感じられます」
とのこと。
エントランスホールの完成予想CG.天井から下がっているのが、鍛冶工芸作家の中澤恒夫さんがつくった鉄のシャンデリア「ロートアイアン」
内廊下(17階)の完成予想CG.落ち着きのある設計と色合い
小石川という伝統ある土地にロートアイアンがうまく調和して、住人に長く愛されるマンションになりそうです。
住戸は、リフォームをすれば自分の好みに変えていくことができます。しかし、共用部分は住人全員の共有財産ですから、個人が勝手に手を加えることはできません。それだけに、共用部分が竣工した時点でどのようなデザインや機能、仕様を備えているかは資産価値にも直結する大切な問題です。
東京カンテイ・中山さんいわく、
「魅力的なインテリアデザインや個性的かつ機能的に構成されたエントランスなど、居住者や来訪者にアピールする共用部分を有するマンションは、多くの人の注目を集め、その土地のランドマークとなる可能性を持っています。そうなれば将来、貸すことになっても、賃料を高めに設定できるはず」
これからマンション選びで迷ったら、共用部分のデザインをチェックしてみてはどうでしょうか。例えば、ちょっとしたエントランスのデザインの違いが、資産価値に影響を与えるかもしれません。