

2008年10月22日更新

カーシェアリングとは、文字どおり、クルマを複数の会員で共同利用するシステムのこと。いわゆる“相乗り”とは違って、会員が互いに調整しながら、時間を変えて車を利用する仕組みです。
1988年にスイスで組織的なカーシェアリングがスタートし、ヨーロッパ、北米へと普及。日本の交通エコロジー・モビリティ財団が発表している数字によると、世界18カ国、約600都市で運営されており、利用者人口は34万8000人、車両数は1万1700台に達しています。これは2006年時点ですから、2年経った現在はさらにその数字が増えているでしょう。ちなみに元祖のスイスでは全人口約700万人のうち、およそ1%にあたる7万人がカーシェアリングの会員になっているそうです。

では、我が国ではどうでしょうか。交通エコロジー・モビリティ財団によると、カーシェアリングの拠点は約320ヶ所、クルマは約520台、会員数は3800人以上とのこと(2008年10月時点)。日本の人口は約1億2000万人ですから、スイスに比べるとはるかに普及率が低いのが現状です。
地球温暖化対策や効果的なCO2削減への意識の高まりが、カーシェアリングの普及を後押しした
とはいえ、それでもここ1年に限定すると、車両台数、会員数共にほぼ倍増しており、急激に普及中。現在、カーシェアリングは住宅街やオフィス街、オフィスビルの地下駐車場などさまざまな場所で展開されていますが、ガソリンの高騰、環境への配慮なども“追い風”になり、市場は拡大することが予想されます。
では、カーシェアリングが分譲マンションに「共用施設」として導入された歴史を振り返ってみましょう。2008年9月時点では、駐車場運営会社や自動車会社、鉄道会社系列のレンタカー会社など約20の業者がカーシェアリング事業に参入していますが、そのなかでも車両ステーション、会員数で60%以上のシェアを占めているのが、オリックス自動車です。社長室の矢崎陽子さんに取り組みやシステムの内容などをうかがいました(以下、コメントはすべて同じ)。
浅草の賃貸マンションに導入されている“プチレンタ”。新築分譲だけでなく、賃貸や中古分譲マンションからも問い合わせは増えているとか
「日本でカーシェアリングの仕組みが登場したのは、1999年9月に横浜で行われた電気自動車の共同利用実験に導入されたことがきっかけです。弊社がカーシェアリング事業を手掛けたのは、この実験終了後、2002年に実験の枠組みを引き継ぐ形で会社(※)を設立したところからです。分譲マンションへのカーシェアリング導入は、2004年12月、グループ会社のオリックス不動産が開発に携わった横浜市のマークススプリングスが最初でした」
※当時社名:シーイーブイシェアリング株式会社
集合住宅の住人が、ICカードを利用してクルマを共同利用する日本初の試みとして話題を呼び、これをきっかけに、分譲マンションへの導入が進行。そして、オリックス自動車のカーシェアリングが急激に注目を集め始めたのは2007年4月頃からでした。
「主な理由には、地球温暖化でCO2削減への意識が高まったこと、ライフスタイルの見直しで、必ずしもクルマを個人所有する必然性がないと気づいた人が増えたこと、コスト意識の高まり、価値観の多様化でクルマを所有するステータスが重視されなくなってきたこと、などが挙げられると思います。さらにその翌年、つまり今年2008年7月に行われた北海道洞爺湖サミット、ガソリン小売価格の急激な高騰にも後押しされたと受け止めております」
事実、2007年9月時点でオリックス自動車のカーシェアリング会員数は約1200人だったのが、1年後の2008年9月には約2800人に急上昇。現時点でのマンションのカーシェアリングはそのうちの約1割(2009年7月までに竣工するマンションを含む)。物件数はトータル約40、車両数は80台におよんでいます。
首都圏では湾岸エリアでカーシェアリングを導入するマンションが増加しそう
エリアでは、東京の湾岸部や横浜のみなとみらい地区、大阪など、都市部が中心。土地が比較的狭く全戸分の駐車場が確保できないため、その代わりにカーシェアリングの導入を検討するケースが多いそうです。現在も多くのデベロッパーからカーシェアリングに関する打診が多数寄せられているとのこと。マンション販売が伸び悩む中、カーシェアリングは、エコ、低コストなどといった時代性を象徴する、魅力的な“カード(切り札)”になると期待されているわけですね。
では、オリックス自動車のカーシェアリングシステム“プチレンタ”を例に、その機能や使い勝手を紹介していきましょう。
最初は気になる料金から。利用頻度によって料金が選べるので、月額基本使用料2980円のプランで計算してみます。時間料金は15分160円、送迎や買い物に「週トータル2時間×4回」の利用として5120円。距離料金が1km 当たり19円なので、40km走行したとして760円。これに基本料金2980円を加えて合計すると「月額8860円」になります(660ccの軽自動車の場合。1000〜1300ccの小型車使用なら、この総計に1000円プラスした料金)。もちろんここには駐車場代、ガソリン、保険、税金などすべてが含まれている計算です。
一方、クルマを個人所有した場合。車両の返済ローンが月額2万数千円、ガソリン・駐車場代が2万円超、保険・税金で1万5000円超となり、月額の合計は6万3000円台(1300ccクラスのコンパクトカー所有と想定)という試算があります。つまり、カーシェアリングとの差は月額5万数千円。年間にすれば60万円以上の違いです。クルマを持ってはいるものの、遠出するわけではなく、買い物や子ども・家人の学校・駅への送り迎えに使う程度の方なら、十分検討に値する数字ではないでしょうか。
専用のICカードをかざしてドアを開け、車内にあるキーでエンジンをかける。乗り終わったらキーを車内に残して、カードで施錠。PASMOやFeliCa付き携帯電話、クレジットカードをICカードにすることもできる
【注】FeliCaはソニー株式会社の登録商標で、同社が開発した非接触ICカードの技術方式の名称です
「当社がマンションで提供しているカーシェアリングサービスの場合、マンションで設定されている管理費には、レンタカー業法上、カーシェアリングのコストは当然一切含まれておりません。マンションに設置されているカーシェアリング車両を利用するのが、そのマンションの住人限定か、住人以外にもオープンになっているかの違いはあるにせよ、登録料、ICカード発行料、そして利用料金は、あくまで利用者とオリックス自動車との間でやりとりさせていただいております」
ところで「使いたい時間にクルマがすべて借りられていたら不便じゃないの?」という声もあるかもしれませんが、現状はさにあらず。予約状況があらかじめ、パソコン画面で確認できるので、もしも希望時間が予約で埋まっていたら利用時間をずらす、あるいは「どうしてもこの時間に定期的にクルマが必要!」と考える人は、そもそもクルマを個人所有するケースも多いとのこと。
予約はPCのほか、携帯電話でもOK
「予約は2週間先まで入れることができますが、一人の方がクルマを独占するような予約の仕方はご遠慮いただいております。もっとも、私どものマンションでの説明会を通じて、会員の皆様には“プチレンタの車両は共有の施設である”という意識が浸透しており、アンフェアな状況にはなっておりません」
したがって、これまでのマンションカーシェアリングにおいて、予約が取れない!といったクレームはほとんどないのだそうです。
「また、例えば、週末に1泊2日で泊りがけのドライブ旅行など、ちょっと長めに利用したい、あるいは大人数が乗れるクルマを借りたいといった会員さまのご要望には、弊社系列会社のレンタカーを割引料金でご利用いただける特典をご用意しております」
クルマの利用が終了してステーションに戻ってきたときに、ナビ画面が 『すばらしい!あなたはエコドライバー名人です。』(燃費(18km/g)以上の場合)などと表示。音声と共にホメてくれる遊び心も
今後の分譲マンションの新たな共用施設として期待されるカーシェアリング。2010年ごろには一般販売が予定されている電気自動車の導入も考えられますから、これまで以上に注目を集めそうです。
これから大規模マンションの購入を検討している方なら、カーシェアリング付きのマンションは十分に選択肢のひとつになるのではないでしょうか。
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