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2009年5月20日更新

家族の新しいカタチを包む間取りプランの進化形
マンションのプランといえば、デザインや設備仕様がクローズアップされがちですが、実際の住み心地を大きく左右するのが間取りです。家族のコミュニケーションが取りやすいとか、家事が楽にできるとか。空間のレイアウトは日々の暮らしに直結するのです。そこで、今、注目の間取りプランを解剖してみました。
脱「田の字型プラン」が進むか? 期待される間取りの進化

 3LDkの標準的な間取りといえば「田の字型」でしょう。北側の共用廊下に面して洋室が2つ、南側のバルコニーに面して縦長のリビングダイニングと和室が並び、玄関から住戸の真ん中を縦に走る廊下と、横に並ぶキッチン・浴室などの水回りが、ちょうど十字に交差している形です。コストを抑えて効率的に作れるプランといわれています。このタイプが定着して久しく、量的にも圧倒的に多いのですが、プランとしては可もなく不可もなく、というのが専門家の位置づけです。

LDKのカタチは、家族団らんの姿を体現する?

 マンションの設計実績が豊富な建築家の碓井民朗さんは、こう指摘します。
「『田の字型』の住戸プランは30年熟成された超合理的プランといえますが、住まいとしての味わいや家族が過ごす場としての潤いは感じられません。同じ広さ、同じスパンの中でも綿密に再検討すれば、日々生活する場として、より優れた住戸プランを創出することはできます」

 マンション業界は、販売に苦戦する時期になると商品企画が進化するといわれています。1980年代前半の不況期にも、PP分離(プライベートとパブリックのスペースを明確に分けたプラン)など現在でも通用する優れたプランが誕生しました。今回もそんな動きが出てくることが期待されます。
 こうした中で、作り手側の明確なコンセプトを打ち出した間取りプランも、少しずつ出てくるようになりました。たとえば「アンビシャス松戸六高台」(売主:アンビシャス)。プランの狙いを、設計監修をした碓井さんがこう解説します。

「既存のLDKの構成を見直し、『一家団らん』をコンセプトにした全く新しいリビングダイニングキッチンを提案しました。一家団らんは英語で『Home Circle(ホーム・サークル)』といいます。この『サークル』に着目し、家族全員が集まって楽しく団らんできる空間として“サークル・リビング”を創り出したのです。『サークル』には『回遊』という意味もありますから、家事が楽にできる『回遊動線』も採り入れました」  次に具体的なプランの特徴を見てみましょう。

全く新しい家族団らんの空間=「サークル・リビング」の誕生

H4タイプの間取り。北側に洋室2つの3LDK

 まずは「アンビシャス松戸六高台」の間取り図をご覧ください。
 バルコニーに面した横長LDの壁側に寄せて、二列型キッチンを設置したのが最大のポイントです。1列は壁面にぴたりと接し、もう1列はLD側に寄せた「アイランド型キッチン」になっています。そして、ガスコンロとシンクを置く島を分けたのがミソ。コンロのあるカウンターは長さが3m強もあり、椅子に座って家事ができるミセスコーナーが設けてあります。マルチメディアコンセントが脇壁に付いているので、パソコンやテレビを置いて、ネット検索や料理番組のレシピを見ながら調理できるという具合。子どもの勉強机の代わりにして宿題を見るのにも十分な広さです。
 アイランド側のワークトップも長さ2.7mと広々していますし、二列の間隔が90cm確保されていますから、夫婦、親子、兄弟で一緒に動いても余裕があります。キッチンを核にした家族の共同作業を通して、豊かなコミュニケーションが進むことでしょう。

 もう一つの大きなポイントは、アイランド型のカウンターの上部には何もなく、LDの天井からキッチンまでフルフラットになっていること。これは平面図ではわかりません。モデルルームを訪問して初めて、その意味が実感できました。廊下から“サークル・リビング”に入った瞬間のダイナミックな開放感です。面積はそれほど広くないのですが、LDとキッチンすべての空間が一体化し広々とした心地よいスペースになっているのです。

 従来からアイランド型キッチンはありましたが、既存のタイプはアイランドカウンターにコンロとシンクを横に並べ、上部に吊り戸棚を設置するのが一般的。そうなると、コンロの前面が袖壁や強化ガラスでふさがれますし、レンジフードの排気管を通すために下がり天井ができ、LDとKの空間が遮断されてしまいます。
 こうしたネックをクリアしたサークル・リビングは、今までありそうでなかった斬新な提案といえるでしょう。

「システムキッチンそのものが、単なる水回りの設備というよりも“まるでリビングの中に配置した家具の一つみたいなイメージ”と、見学されたお客さんには好評です」
 と、アンビシャス販売担当者はユーザーの反応を伝えています。

(左)サークル・リビング。天井をフルフラットにするために技術的なハードルがあったが、レンジフードのダクトを吊り戸棚の上部奥に納めるなど、実用新案を取得した技術開発でクリア。またアイランドカウンターの壁を吊り戸棚の扉と同じデザインにすることで、より一体感のある空間になっている。(右)二列型のゆとりのあるキッチン。奥からユーティリティにつながる。

 サークルのもう一つの意味、『回遊動線』も巧みに確保されています。ミセスコーナーの脇からすぐに洗面室内のユーティリティコーナーに行ける扉があり、さらに廊下からLD、キッチン・バルコニーをぐるっと巡る動線がつながり、移動もスムーズ。調理・片づけ・洗濯・物干し・掃除といった一連の家事がやりやすくなっています。通常はバルコニーに付けることが多いスロップシンクをユーティリティコーナーに設置し、給湯も可能にしてあるので、冬場の洗い物も苦にならないのも嬉しい配慮です。
 モデルルームに行くと、ここでは紹介しきれなかった多彩な工夫が発見できるでしょう。

家族のコミュニケーションを促すセミパブリック空間

90A1タイプの間取り。約88平米の専有面積で、普通なら4LDKも可能だが、個室1つ分を減らしてファミリーコートに当てている

 家族のコミュニケーションや子育てをテーマにした生活提案は他にもあります。たとえば「クレヴィア若葉台パークナード」(売主:伊藤忠都市開発・パナホーム)の「ファミリーコート」もその一つ。リビングダイニングとは反対のキッチンの裏側に設けたスペースで、カウンターで宿題をしたり、子ども同士で趣味にふけったり、さまざまな使い方ができそうです。家事をしながら子どもの様子を見守れるカウンターキッチンの応用形といえるかもしれません。リビングに来客があっても、子どもが部屋にこもりきりにならなくて済むような配慮ともいえるでしょう。

 ファミリーコートに面して北側に並べた2つの子ども部屋もユニーク。部屋の間仕切りを引き戸にして、相互に交流しやすいように工夫されているのです。子どもの成長に応じて、簡単なリフォームで独立性を高めることもできるようになっています。

102平米の4LDKの中和室をファミリーライブラリーにアレンジした提案プラン

 この他、同物件では、リビングダイニングに接したコーナーに「ファミリー・ライブラリー」を設けたプランも提案されています。子どもだけでなく、親子でくつろげるプライベート空間になるといえそう。2つ並んだ子ども部屋にまたがる大型の「キッズクローク」は、ライブラリーと行き来できる「ウォークスルー」タイプになっています。
 収納スペースでの洋服選びにも、親子、兄弟のコミュニケーションが生まれます。

 以上のように、プライベートな個室でもパブリックなLDでもない、いわばセミパブリックな空間から、家族の新しいカタチが見えてくるかもしれませんね。

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